PGT-A(出生前染色体検査)

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着床前(受精卵)染色体検査「PGT-A」について

当院は、日本産科婦人科学会よりPGT-Aの実施施設として認定を受けています。

目次:(目次のクリックで該当箇所にスキップできます)

PGT-Aとは?対象となるのは?

PGT-Aは、体外受精や顕微授精で得られた受精卵(胚盤胞)の細胞の一部を採取(生検)し、その細胞の染色体数に異常がないかを調べる検査です。
この検査の対象となるのは、「胚移植を繰り返しても妊娠に至らない方」や「過去に2回以上の流産や死産を経験された方」です。

詳しくは、下記の日本産科婦人科学会の動画がわかりやすいのでご覧ください。
不妊症および不育症を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-A・SR)|公益社団法人 日本産科婦人科学会 (jsog.or.jp)

 

なぜPGT-Aが必要なのか?

なぜPGT-Aが必要なのか?

妊娠・出産に至らない(着床しない・流産する)最大の原因は、偶発的な受精卵の染色体数の異常です。PGT-Aで染色体数に異常がない受精卵を選んで移植することで、流産を減らし、1回の胚移植で妊娠し出産に至る確率を高めることが期待できます。

 

方法

方法

採卵・胚培養を行い、胚盤胞まで育った段階で、後に胎盤になる部分(栄養外胚葉)の細胞を5~10個ほど取り出します。胚盤胞は一旦凍結保存し、取り出した細胞を検査機関に送って解析します。結果は3~4週間後に患者様にお伝えできます。

 

妊娠率と流産率

(Fertil Steril 2018; 110: 113-121 / Reprod Med Biol 2023; 22: e12518)

妊娠率と流産率
妊娠率と流産率

青のグラフ:PGT-A実施の凍結胚移植
ピンクのグラフ:PGT-Aなしの凍結胚移植
緑のグラフ:PGT-Aなしの新胚移植
42歳以上では、PGT-Aなしだと妊娠率は10%程度ですが、PGT-Aを行うと他の年齢層と同じく70%程度の妊娠率が期待できます。
ただし、PGT-Aを行った胚でも、流産率は約10%あることに注意が必要です。

 

PGT-Aのメリット

  • 胚移植1回あたりの妊娠率が上がります
  • 流産率が下がり、身体的・精神的な負担が減ります
  • 妊娠までに必要な胚移植の回数を減らせる可能性があります
  • 染色体異常の胚を移植せずに済むので、出産に至る可能性がない胚移植が避けられます。また、妊娠反応が陽性になった後に流産してしまう時間的なロスが防げて、その胚移植にかかる費用も節約できます(PGT-A検査費は高額ですが、妊娠しない胚移植を回避することで、その分の費用が抑えられるため、結果的に差し引きゼロと言えます)。

 

PGT-Aのデメリット・留意点

  • 妊娠率は100%ではありません(実際は60~70%)。流産率も0%ではありません(実際は10%)
  • 生検手技(細胞を取り出す操作)により受精卵にダメージを与える可能性があります
  • 出産できたかもしれない正常な胚を、移植に適さないと判断して破棄してしまう可能性があります(少数の採取細胞数を解析するため、診断の精度には限界があます)
  • 解析結果によっては、モザイク胚など、移植するべきかどうか判断が難しい場合があります
  • 移植できる胚が得られないこともあります
  • 稀に出生児と結果が不一致となることがあります(1~3%程度)

 

費用

○PGT-Aを実施するための資材費:22,000円(税込)
○検査する胚盤胞1個につき:66,000円(税込)
⇒例)1回の採卵で胚盤胞5個に対してPGT-Aを実施する場合:22,000円+66,000円×5=352,000円
PGT-Aは保険適用外となるため、ご希望される場合には、採卵・胚移植通して、検査・薬剤もすべて自費診療となります。

 

実際にどのような方に勧めるの?(当院の見解)

年齢が若く、着床不全の検査なども網羅的に実施したが妊娠しない方

(ご夫婦の染色体検査は必須です)経験上、年齢からは想像できないほど染色体正常率が低いカップルがおられます。大変苦労されている場合は、そこに問題がないか確認するのも良いでしょう。

年齢が高めで、AMHも高く、胚盤胞到達数が多い方

胚盤胞が多く取れても、胚染色体正常率が低いと、染色体異常の胚を移植したり、その先で流産したりして時間的なロスが生じやすいです。染色体異常胚を除くことで、時間的なロスを減らし、出産に繋げられることが期待できます。

年齢が高めの方(迷います)

「その方にとって」異常胚を除くことで時間的なロスが減らせるメリットと、生検リスクや解析の確実性といったデメリットのどちらが大きいか、判断に迷う部分もあります。

 

赤ちゃんの性別はわかりますか?

日本産科婦人科学会の方針に従い、性別はお伝えできません。

 

必ず元気な赤ちゃんが産まれますか?

PGT-Aは胚の染色体数の異常を調べる検査です。染色体異常以外が原因の流産や赤ちゃんの病気などはわかりません。

 

当院で実際にPGT-Aを行う場合の流れは?

1

外来でPGT-A希望の旨をお伝えください。当院のPGT-Aに関する説明書をお渡しします

2

当院の説明書に加えて、日本産科婦人科学会の動画を試聴の上、チェックシートも記載していただきます

3

その上で、カウンセリングを行い、ご夫婦でPGT-A希望される場合には、ご夫婦の染色体検査(1人33 ,000円・他院の結果持ち込み可)を行います(解析に影響を与える場合があるため)

4

自費診療で採卵→胚培養→PGT-Aを実施します

5

3~4週間後に、結果をご説明します。特殊な結果の場合は、大学病院の遺伝診療部でのカウンセリングをおすすめすることもあります