保険診療と自費診療の違い(コラム)

  • HOME>
  • 保険診療と自費診療の違い(コラム)

保険診療と自費診療の違い

保険診療と自費診療の違いについては、いくつかの項目に分けてご説明します。

前提

保険診療と自費診療の違い

特殊な条件下を除いて、保険で採卵した場合は保険で胚移植をしなければならず、自費で採卵した場合は自費で胚移植をしなければなりません。つまり、保険で採卵して自費で胚移植したいというような希望は叶わないのです。
以下は個人的な見解ですので、コラム的に読んでいただければと思います。

「ふんわりとした例え話」

お風呂の中心から「コップ=保険」もしくは「桶=自費」で水をすくうことを想像してください(現実的には妊娠しやすさには個人差がありますが、ここではお風呂の中心にいる方が妊娠しやすいと仮定しましょう)。

自分が中心にいた場合は、コップでも桶でもすくえます。自分が少し中心から外れていた場合は、コップではすくえないけれど、桶ならすくえるというが起こります。ただし、潜在的に妊娠や出産が不可能な胚(染色体異常胚・年齢によってその発生率は大きく異なる)も存在します。そのような場合は、お風呂の端っこにいる状況なので、コップでも桶でもすくえません。

しかし、自分がどこに位置しているのかは知りようがありません。自分で判断できるのは、「コップ」か「桶」かを選択することだけです。それがコストの差と妊娠率の差となります。

・円の中心にいればコップでもすくえるので、自費胚移植はコストの無駄かもしれません
・中心から外れていた場合は、桶ではすくえるけれど、コップだとかなり妊娠しにくい可能性もあります

費用

当院の自費設定は、保険診療の約2倍です。都会では約3~4倍が相場と思われます。

妊娠率

保険診療と自費診療での妊娠率の差を考察したデータは、学会などでも発表されているのを見たことがありません。ゆえにわからないというのが現時点での見解です。ただし、肌感覚では、自費診療時代に妊娠された方が2、3人目希望で自費胚移植をされるとさらっと妊娠するなぁという印象はあり、数%自費診療の方が成績が良いと予想されます(費用が2倍3倍になるからといって、妊娠率が2倍以上になるということは現実的にはあり得ません)。

採卵

採卵においては、「当院を含む先進医療がしっかりと認定されている施設」ならば、自費診療とほぼ差はないと考えます。特に当院は個人病院ですので、大手クリニックと違いマニュアル的に動くことはありませんので、自費診療時代と同様に個々の患者様に合わせた採卵メニューを組んでいますから、本当に変わらないと思います。

保険診療の採卵でできない技術としては、「FSH調整法(+PFC-FD療法)」と「出生前診断(PGT-A)」と「透明帯除去術(ZPF)」の3つがあるかと考えます。

FSH調整法は、1~6ヶ月に一度くらいしか卵子が育たないAMHが0.3以下の方に行われる調節卵胞刺激法のことです。この治療法は保険診療で認められている方法ではまったく包括できないため自費診療のみとなります。

 

出生前診断(PGT-A)は、海外では一定の有効性が認められており、当院でも自費診療ならば実施可能な治療で、採卵・胚移植ともに全額自費となります。

透明帯除去術(ZPF)は、日本でも数箇所くらいしか実施していないと考えられます。今までにない革新的な方法で、とんでもなく改善することもある一方で、結果がまったく改善しないことも多いようです。ZPFは当院では取り入れておりません。

胚移植

ここに結構、差があるのかもしれません。
特にホルモン補充周期での凍結胚移植では、プロゲステロン製剤を単剤ではなく、2剤以上使用した方が妊娠率が高いというデータがあり、当院も含めて2剤併用しているクリニックが結構ありましたが、保険診療では単剤と決められています。また、G-CSF、PRP療法(PFC-FD療法)、子宮収縮抑制剤、免疫寛容薬、ビタミン剤など、当院でも自費診療時代から削ぎ落すしかなかった治療薬が多々あります。